嫌われ松子の一生 山田宗樹 幻冬舎 600円(上)/630円(下)

大学を卒業し、中学の教師となった川尻松子。昭和22年生まれ。女性の社会進出がまれだった時代に、輝かしい人生のスタートを切った…はずだったが、松子のその後の人生は、不幸を加速させながら崩落していく。一度倒したら手のほどこしようがないドミノのように。
平成13年。東京都内のアパートで中年女性の他殺体が発見される。内臓破裂。被害者は53歳の松子だった。松子のおいで東京の大学に通う川尻笙(しょう)が、郷里の父から松子のアパートの後始末を頼まれる。『存在すら聞かされていなかった伯母、松子はなぜ殺されたのだろう。どのような一生を送ってきたのだろう』。物語は、笙が次第に掘り起こしてゆく伯母の生涯に、松子自身の告白が時系列で追従する形で進む。
よくもここまで…。呆れてしまうほどに松子に不幸は襲いかかる。だが、不運、不幸の連鎖は松子の言動や激情型の性格によるところも多く、受け止め方によっては、自分に正直に、思い切り駆け抜けた人生だと言えるのかもしれない。
実際に、「女性の生きざま」を考える研究テーマとしても注目され、神戸市にある女子大が、全国でも初となる大学生主催の新作試写会に、この小説を原作とした同名映画(27日公開)を選んだ。鑑賞者は女性のみ。松子が現代女性に「不幸」と「意志」とを問う。(R)
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