今年1月に開場して間もなく1年を迎えようとしている東京宝塚劇場。笑顔で観客を迎えてくれる背筋のすーっと伸びた女性が同劇場初の女性支配人、小川甲子さんだ。かつて宝塚歌劇団のトップスター・甲にしきとして活躍。さらに女優を経て、萬屋錦之介さんの妻になり引退と、いくつもの人生を歩んできた小川さんが、次の人生のステージに選んだのがこの劇場だった
[1]意外と合っている支配人
−−支配人になられたきっかけは?
錦之介が亡くなり、これからどうしようかと考えていたとき、阪急電鉄の小林公平会長に偶然、お会いしたんです。久しぶりにお話ししていたら、「甲ちゃん、できることがあれば力になるからね」とおっしゃってくださって。その帰り、車を運転していて思いついたんです。
−−突然にひらめいた?
それまで、タカラヅカのタの字も考えていなかったんですけどね。女優はもう十分やらしていただいたから、やりたいとは思わなかったし。その日の夜にご自宅にお電話して、「会長、今度いつ東京にきはるんですか? 5分だけお会いできませんか」とお願いしたんです。お会いしたら「怖いなぁ!」って。そこで私が「新しい劇場の支配人がしたい!」って言ったんですね。
−−いきなりですね
公平会長は「でもね、君。支配人にしても、みんなずっと年下だよ。それでもいいの?」って。「構いません。初めての仕事ですから」とお返事しました。支配人だろうと何であろうと、そういう劇場の仕事をしたかったんです。
−−それを受け入れたのも、大変な決断ですね
そりゃ、大変だったと思いますね。突然、ウン10歳の会社勤めもしたことがないオバサンが言い出したのですから。
意外と合ってると思うな(笑い)。私がこうやって表に出るような宣伝も、今までになかった一つの方法だしね。入った以上はね、私にしかできないこともあるかなと。そこを、私なりに考えてやっていけば、それなりに広がっていくのではないかなと考えています。
−−具体的には
営業回りもするし、スポンサーさんとのお付き合いも、お客さま探しもします。歌劇団の編成委員もさせていただいていますしね。まだ、実にはなっていないかもしれませんが、歌劇団へ、何かしらの橋渡しができたらと思います。
−−ほかの人とは違うフィールドの人脈がありますからね
それがすべていいかどうかはわかりませんけど、私は何でも、してみることが大事だと思っているんです。「ダメもと」という気持ちで、アタックしてみる。まず当たって、砕けたらいいんです。
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