今年1月に開場して間もなく1年を迎えようとしている東京宝塚劇場。笑顔で観客を迎えてくれる背筋のすーっと伸びた女性が同劇場初の女性支配人、小川甲子さんだ。かつて宝塚歌劇団のトップスター・甲にしきとして活躍。さらに女優を経て、萬屋錦之介さんの妻になり引退と、いくつもの人生を歩んできた小川さんが、次の人生のステージに選んだのがこの劇場だった
[8]夢生む良さは変わらない
−−支配人としての課題は
男性客と、今まで一度も宝塚歌劇団の舞台を見たことのないお客さまに来ていただくことです。ロータリークラブに出向いたり、いろいろ営業活動もしています。
−−東京宝塚劇場は今年1月の開場以来、全公演完売ですね
ありがたいことですが、劇場は客席数が決まっていますから、今はよくても、今後どうなるか分かりません。この数を落とさないことが課題。営業・広報担当としては、落ちないための下地をつくっていくことが大事だと思っています。
−−最近、男性客は増えているように見えますが
いいえ、まだまだ。平日の夜の部や日曜日は比較的多いのですが、若い男性客をみかけたり、父親との親子連れの姿をみるとうれしいです。そういう方々が、もっともっと劇場へ足を運んでくださるようにしたいと思っています。
宝塚歌劇団は昨年6月、準トップスターらを専科に組替えし、新専科制度をスタートした。現在、専科の樹里咲穂がジャニーズ事務所の「SHOW劇『SHOCK』」に出演中など、近年にはなかった外部出演も増えている
−−宝塚歌劇団そのものも変革期といわれていますが
いいことだと思います。私たちのころは、男役が女性の役でドラマに出たりもしていましたから。ただ、以前はもっと、のほほんとしていて、インターネットもなく、周りからうるさく言われませんでした。その状況をある程度見極めながら、その人にプラスになるようなものであれば、どんどん出ればいい。宝塚のイメージを壊さない範囲の外部出演も、まだまだいろいろありますよ。そういうものなら、どんどん他流試合に行けばいいと思うんですよ。
−−時代に合わせてですね
そうですね。ただ、今は世の中の芝居の流れが、全体にさらっとしてきたように感じますね。自分なのか役なのか分からない演じ方になっているから、芝居そのものの作り方も変わってきている。私はほかの人が10したら、自分は20しないと気がすまないタイプだったけど、時代そのものがそういう風に変わってきていると感じますね。
−−宝塚そのものの魅力は変わっていますか
うその世界を夢の世界に変えてくれる、その良さは変わらないでしょう。女だけど、女とは思わさず、男でもない。そんな世界に1つしかないスタイルが、夢の世界を生み出してくれるのです。1度見ていただくのが一番です。ぜひ、どうぞ。劇場でお待ちしております。=おわり
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