ようこそ劇場へ
東京宝塚劇場支配人 小川甲子さんインタビュー(7)

 01/12/18 産経新聞東京夕刊
 Text By TAKUBO,Oko/田窪桜子@東京文化部


今年1月に開場して間もなく1年を迎えようとしている東京宝塚劇場。笑顔で観客を迎えてくれる背筋のすーっと伸びた女性が同劇場初の女性支配人、小川甲子さんだ。かつて宝塚歌劇団のトップスター・甲にしきとして活躍。さらに女優を経て、萬屋錦之介さんの妻になり引退と、いくつもの人生を歩んできた小川さんが、次の人生のステージに選んだのがこの劇場だった

[7]家が大好きな夫・錦之介

平成二年、萬屋錦之介さんと結婚し芸能界を引退した

−−女優業に未練は

『女系家族』(昭和60年)で芸術祭賞をいただいて、この後、女優を続けていても、もう二度といただけないなと思っていたんです。女優は十分させてもらって満足していましたから抵抗はなかったです。

−−今度は、錦之介さんの芸を支えるほうにと…

彼は病気も倒産もしましたが、このまま終わってしまうのはもったいない、もっと良くなると思ったんです。何か私で力になれることがあるのならと。もちろん、好きだという気持ちがあったからですけどね。それにね、彼は一人ではいられない人でしたから。
−−知り合ったのは梅田コマ劇場での共演ですよね

実は、宝塚歌劇団を辞めた年に彼のテレビドラマに出ているんです。でも彼は、「覚えてないな」と言うぐらいで印象にはなかったのね。

−−お互いがですか?

私は、朝からずーっと待たされていて、ぱっと来てぱっと撮って、ぱっと帰ったという印象。あんまりいい印象は残ってなかったですけどね。

−−普段の錦之介さんは

外へ出て人と話しているときより、家の中のほうが優しい人です。外に行くと、気配りしてあんまりしゃべらないの。「気を使わないと感性は磨かれないよ」ってよく言っていました。「でも、君はのんびりしているなあ」って私は言われてました。

−−役者としては

私も一緒になるまで知らなかったのですが、彼はね、本読み(けいこ初日)までに、90%せりふを覚えていて、その前に自分で全部調べ物もしている。偉いなあと思いました。もちろん、覚える努力もして、自分でちゃんと計画をたてて、きっちり家でけいこをしていました。私も昔からこれだけけいこしておけば、もうちょっと芝居が上手になったかな、なんて思ったりしましたね。

−−大スターですから気難しいのではとも思うのですが

全然、そんなことはないです。家にいるのが大好きだったから、京都に撮影に行っても、私が東京にいると、1日休みができたら一人でぽっと帰ってきてしまうんですよ。

−−役者の奥様は家事以外にも、いろいろ大変ですよね

チケットの手配やあいさつ回りもありますからね。でもね、うちは不思議なの。役者さんの奥様は楽屋には、あまり入らないものですけど、うちは錦之介が「ここにいなさい」って、楽屋にびょうぶで私の部屋を作ってくれるの。一緒に劇場に来て開演前に表でごあいさつして、びょうぶの陰で用事をすまして、また一緒に帰るんです。1年で360日は一緒でしたね。

錦之介さんとのハワイ旅行=昭和63年2月



[1]意外と合っている支配人
[2]小さいころからスター
[3]「ほんと、歌では苦労しました」
[4]舞台の後にテレビ撮影
[5]宝塚って本当にあったかい
[6]どこまでも奥深い「芸の世界」
[7]家が大好きな夫・錦之介

[8]夢生む良さは変わらない
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