ようこそ劇場へ
東京宝塚劇場支配人 小川甲子さんインタビュー(4)

 01/12/13 産経新聞東京夕刊
 Text By TAKUBO,Oko/田窪桜子@東京文化部


今年1月に開場して間もなく1年を迎えようとしている東京宝塚劇場。笑顔で観客を迎えてくれる背筋のすーっと伸びた女性が同劇場初の女性支配人、小川甲子さんだ。かつて宝塚歌劇団のトップスター・甲にしきとして活躍。さらに女優を経て、萬屋錦之介さんの妻になり引退と、いくつもの人生を歩んできた小川さんが、次の人生のステージに選んだのがこの劇場だった

[4]舞台の後にテレビ撮影

−−宝塚歌劇団に在団中から外部出演が多かったですね

宝塚では男役ですが、外では男性と一緒に女優として出ていました。芸術座や梅田コマ劇場、テレビドラマや長谷川歌舞伎などいろいろありましたね。当時はみんなそうやって出ていたんです。寿美花代さんも、テレビで高島(忠夫)さんと結ばれたんですよ。

テレビは人気時代劇『岡っ引どぶ』などの民放ドラマや、NHKの『横堀川』『けったいな人びと』など実に多彩だ。ほかにも外部出演は宝塚の番組や民話劇場など多岐に渡る

−−宝塚の舞台と同時進行で撮影をするのですか

当時は1日2回公演が少なくて、東京公演も今のように通年ではなく、1年に6作ぐらいでしたから、時間があったのかしら。そのかわり休演日はなかったですけどね。舞台があるときは、だいたい終演後に夜中や朝まで撮影していました。

−−いつ休んで、いつ遊んでいたんですか

上手にローテーション組んでいたんじゃないかしら。昔は、少しぐらい寝なくったって平気だったし。ほかの人も外の仕事をしていましたし、こういう仕事をしている限りは、何もしていないより勉強になりますでしょ。遊ぶっていっても、ボウリングぐらいですしね。

−−舞台を終えてからボウリングですか

ボウリングには一時期凝っていて、歌劇団から禁止令が出たぐらいです。夜10時におけいこが終わったら10時半にボウリング場に着いて、毎日3ゲームして帰ってましたから。

−−すごい体力ですね

ボウリングなんてたいして体力いらないですよ。夜十時まで舞台のおけいこして、その後、自分で日舞と芝居と歌のおけいこに通ったりも当たり前。だって、舞台で踊っているときは、緞帳(どんちよう)が下がったときに、つけまつげが汗でなくなっているぐらい動くのですから。『ピラールの花祭り』なんて、着替え一分。あとは踊り続けでしたよ。

−−男役として演じた後に、すぐ女優になって撮影に入れたのですか

いいえ。外のお芝居に出たら、「甲君、この役は男じゃないよ。顔だけ見てたら女だけど、動作は男だよ」と怒られていました。いまの人のほうが、すっと女の子になれるから器用かもしれませんね。

−−動作が違うのですか

舞台で男役の体が身についていますから、背中に針金が入っているような、ぎすぎすした感じになるんです。私たちのころは宝塚を辞めても、女性の体になるには10年かかるよ、といわれていました。




[1]意外と合っている支配人
[2]小さいころからスター
[3]「ほんと、歌では苦労しました」
[4]舞台の後にテレビ撮影
[5]宝塚って本当にあったかい
[6]どこまでも奥深い「芸の世界」
[7]家が大好きな夫・錦之介
[8]夢生む良さは変わらない
 産経新聞購読お申し込み  産経Web-S お申し込み
産経Webに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産經・サンケイ)Copyright 2001 The Sankei Shimbun. All rights reserved.