今年1月に開場して間もなく1年を迎えようとしている東京宝塚劇場。笑顔で観客を迎えてくれる背筋のすーっと伸びた女性が同劇場初の女性支配人、小川甲子さんだ。かつて宝塚歌劇団のトップスター・甲にしきとして活躍。さらに女優を経て、萬屋錦之介さんの妻になり引退と、いくつもの人生を歩んできた小川さんが、次の人生のステージに選んだのがこの劇場だった
[4]舞台の後にテレビ撮影
−−宝塚歌劇団に在団中から外部出演が多かったですね
宝塚では男役ですが、外では男性と一緒に女優として出ていました。芸術座や梅田コマ劇場、テレビドラマや長谷川歌舞伎などいろいろありましたね。当時はみんなそうやって出ていたんです。寿美花代さんも、テレビで高島(忠夫)さんと結ばれたんですよ。
テレビは人気時代劇『岡っ引どぶ』などの民放ドラマや、NHKの『横堀川』『けったいな人びと』など実に多彩だ。ほかにも外部出演は宝塚の番組や民話劇場など多岐に渡る
−−宝塚の舞台と同時進行で撮影をするのですか
当時は1日2回公演が少なくて、東京公演も今のように通年ではなく、1年に6作ぐらいでしたから、時間があったのかしら。そのかわり休演日はなかったですけどね。舞台があるときは、だいたい終演後に夜中や朝まで撮影していました。
−−いつ休んで、いつ遊んでいたんですか
上手にローテーション組んでいたんじゃないかしら。昔は、少しぐらい寝なくったって平気だったし。ほかの人も外の仕事をしていましたし、こういう仕事をしている限りは、何もしていないより勉強になりますでしょ。遊ぶっていっても、ボウリングぐらいですしね。
−−舞台を終えてからボウリングですか
ボウリングには一時期凝っていて、歌劇団から禁止令が出たぐらいです。夜10時におけいこが終わったら10時半にボウリング場に着いて、毎日3ゲームして帰ってましたから。
−−すごい体力ですね
ボウリングなんてたいして体力いらないですよ。夜十時まで舞台のおけいこして、その後、自分で日舞と芝居と歌のおけいこに通ったりも当たり前。だって、舞台で踊っているときは、緞帳(どんちよう)が下がったときに、つけまつげが汗でなくなっているぐらい動くのですから。『ピラールの花祭り』なんて、着替え一分。あとは踊り続けでしたよ。
−−男役として演じた後に、すぐ女優になって撮影に入れたのですか
いいえ。外のお芝居に出たら、「甲君、この役は男じゃないよ。顔だけ見てたら女だけど、動作は男だよ」と怒られていました。いまの人のほうが、すっと女の子になれるから器用かもしれませんね。
−−動作が違うのですか
舞台で男役の体が身についていますから、背中に針金が入っているような、ぎすぎすした感じになるんです。私たちのころは宝塚を辞めても、女性の体になるには10年かかるよ、といわれていました。
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[1]意外と合っている支配人
[2]小さいころからスター
[3]「ほんと、歌では苦労しました」
[4]舞台の後にテレビ撮影
[5]宝塚って本当にあったかい
[6]どこまでも奥深い「芸の世界」
[7]家が大好きな夫・錦之介
[8]夢生む良さは変わらない
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