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「長屋の花見」とベイ・シティ・ローラーズ |
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まずクイズをひとつ。ニセのお客を「さくら」と呼ぶのはなぜでしょうか? 露天などで品物をほめたりしてお客のふりをし、本物のお客が寄ってくると散らばっていなくなってしまう。つまり、人が寄り集まるころには散ってしまう。サクラの花も同じなので「さくら」だって。どうです、落語家は物知りでしょう?
そんなサクラ前線を待ちきれず、寄席ではおなじみの「長屋の花見」をだれかが毎日のようにやっている。名演はなんといっても亡き柳家小さん師匠。
「佃育ちの白魚(しらう)でさえも、花に浮かれて隅田川」
こんなマクラから噺に入ります。
卵焼きのかわりのたくあん漬け、一升瓶に酒のかわりにお茶を入れた「オチャケ」をもって長屋の連中が、大家さんに花の名所・飛鳥山に連れていってもらう、という噺。
オチも実にいい。長屋の住人でたったひとりの風流人であるのり屋のじいさんが大家さんにほめられようと一句詠む。
「この山は 風邪をひいたか 花(鼻)だらけ」
花見時の江戸っ子は浮き浮き。仕事も手につかない。
ベイ・シティ・ローラーズ「サタデイ・ナイト〜ベイ・シティ・ローラーズ・メモリアル」は理屈抜きにウキウキワクワク。
タータンチェックのユニホームで英国中を大騒ぎさせた英エジンバラのバンド。1976年の来日。このローラーズ旋風が、ハリケーンが襲ってきたかのごとく押し寄せた。空港はメチャクチャ。警備員や警官の怒り声、報道陣とタータンチェック姿で出迎えにきたファンの少女たちで空港は大騒ぎになった。
さらにこの騒ぎは公演会場だった日本武道館まで続いた。メンバーのひとりレスリー・マッコーエンに向かって「レスリー!」とさけんだ、あのタータンチェックの少女たちは、今ごろどうしているのだろうか?
実は私、栄枝師匠も寄席をさぼってコンサート会場へと駆けつけた。「青春に捧げるメロディー」「イエスタデイズ・ヒーロー」はもとより、「サタデイ・ナイト」はもうウキウキワクワク。タータンチェックの少女たちと、たくあんでもオチャケでもかまわないとばかりに花見に浮かれた江戸っ子と同じ。青春だった。
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