晴読雨読
イッツ・オンリー・トーク  絲山秋子  文春文庫 390円
Op.(オペレーション)ローズダスト 直感で東京・蒲田に住むことにした私。一流大学を卒業後、新聞記者となってローマ支局に赴任。精神病院へも通い、今は鬱(うつ)状態。会社の疾病手当てで乗り切った後は退職し、貯金で暮らしている。

そんな私が蒲田で関わることになった男性は、大学時代の友人で都議会議員の本間。ネット「Love KAMATA」で知り合ったうつ病のヤクザ、出会い系サイトの常連客だったインテリな“痴漢”、そして私の家に転がり込んできたパチンコで身を滅ぼしたいとこの祥一…。

いかにも“絲山作品”らしい。現実や心の整理整頓ができなくなった30代半ばの女性の心理が、シンプルな文体でつづられている。男たちもみな、一癖も二癖もあるが、私は不足しているビタミンのようにそれぞれを上手に大胆に補完する。ある意味社会から脱線しながら、現状を客観的に分析してみせるあたりに自立した女性の強さがにじみでる。6月上旬から寺島しのぶ主演で公開される映画「やわらかい生活」の原作でもある。

これまでに読んだ本
模倣犯容疑者Xの献身雪屋のロッスさんオペレーション・ローズダスト袋小路の男沖でまつ嫌われ松子の一生
晴読雨読(せいどく・うどく)は、ENAK編集部員が読んだ本を新旧問わず、気ままに紹介します。書評というより読書日記みたいなもの、でしょうか***晴れた日は田を耕し、雨の日は家で読書をする。そんな悠々自適な生活を意味する中国の故事成語「晴耕雨読」。あこがれるけど、現実はそうもいかない。でも、ちょっとした時間を見つけて本を開く幸せもいいもの。晴れても降っても…。 だから「晴読雨読」。

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