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ポール・マッカートニー「ライヴ・イン・ザ・US 2005〜THE SPACE WITHIN US〜」
天才はどこまでも無邪気にロックンロールと遊ぶのだ
ワーナーミュージック・ジャパン
WPBR90600 ¥4,900
ポール・マッカートニーの2005年の北米ツアーを記録したDVD。ツアーは同年9月16日のマイアミを皮切りに、11月30日のロサンジェルスまで37公演が行われた。

宇宙ステーションのクルーとの生の交信など、ライブ演奏の映像にツアー中のトピックスを織り交ぜる手法は、ポールのファンなら映画「ウイングス・オーバー・アメリカ」を思い出すかもしれない。あちらは1976年の、ポール率いるウイングス初の全米ツアーの記録だった。

というわけで、30年の月日の流れを感じながら見るのも一興だろう。あのときは、ポールは第2のピークを迎えたところだっし、ウイングスというバンドももっとも脂ののった時期だったわけで、「ウイングス・オーバー・アメリカ」は勢いを感じさせた。

一方、今回の映像から感じられるのは30年をへたことによる余裕…といいたいところだが、どっこい、ポール、貫禄とか余裕とかとは無縁だ。むしろ、子供に返ったように無邪気にうたい演奏しまくる。

無邪気さを感じさせる要因のひとつは選曲か。90年代のポールはビートルズナンバーの再現に夢中になっていたが、この映像を見ると昨年はもっとバラエティに富んだ構成になっている。ビートルズナンバーでも「アイル・ゲット・ユー」とか「フィキシング・ア・ホール」とか地味な楽曲を持ち出し、ウイングス初期の「トゥー・メニー・ピープル」も披露する。

90年代に比べると全般に地味な選曲なのだけど、「トゥー・メニー・ピープル」やビートルズの「アイヴ・ガッタ・フィーリング」などはとてもかっこいい。もはやどの曲をやるかとか、どんな構成にするかとか、そんなことはどうでもよくて、気合い一発でかっこよく聴かせられてしまうという域に達した、という感じだ。

繰り返すが「ウイングス・オーバー・アメリカ」のときのような勢いはないかわり、無邪気さがある。ロックンロールというおもちゃと奔放に遊ぶ無邪気さが。そして、その無邪気さはすごみと紙一重なのである。

ところで、今年5月に2度目の妻との破局が発覚したポール。この映像作品にその夫人はほんの一瞬しか出てこない。そしてラストシーン。ポール田園の中の一本道をひとりで歩いて行く。おどけて踊りながら。チャップリンの名作「サーカス」のラストシーンのような寂しさを漂わせる。が、結局、途中でくるりと向きを変えてこちらに向かってやってくる。そう。ポール、私生活ではひとりなっちゃったけれど、それでもおどけながら、まだまだどこかへ去ってしまったりはしないのだ。 (ENAK編集長)

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ポール・マッカートニー「ライヴ・イン・ザ・US 2005〜THE SPACE WITHIN US〜」






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