[1]栄光の77期
安蘭けいが、今年3−4月の宝塚大劇場公演(
『さくら』と『シークレット・ハンター』)で、星組トップスターに就任した。現在、その東京お披露目舞台が東京宝塚劇場で上演中である。
安蘭は、1991年初舞台の77期生。故にトップ披露公演中の現時点では、研究科17年。就任時が3月公演だから、研16越えすれすれという時期だった。
研16でのトップ就任は、2001年の
紫吹淳、
香寿たつき、02年の
絵麻緒ゆうと並んで、歌劇史上もっとも遅いトップスターである。
無論、遅かろうと早かろうと、トップを極められたのであれば、それは素晴らしいことだ。が、ここで議論のテーマにしたいのは、トップスターへの階段に必ず踏まなければならぬステップが存在しているのか、どうかということだ。暗黙の約束事、ルールと言い換えてもいい。
安蘭トップ就任! 近ごろ、宝塚ファンにとって、これほどうれしいニュースはなかった。実力一番を常に讃(たた)えられながら、待たされ続けていた折りの出番だったからである。
演技、歌唱、ダンス3拍子に秀れていても必ずトップになれるわけではない。それは承知の上だが、宝塚の場合、歌劇60周年、いわゆる初演『ベルサイユのばら』あたりから、トップスターへの道を歩み始めるためにはまず、越さなければならないいくつかのハードルが用意されていた。
新人公演(以下、新公)主役、バウホール公演主役、2番手格という位置…など、男役としてのステップだ。その中でも、新公主役は早い遅いにかかわらず、出演できる7年間のうちに1度は経験しなければならぬハードルだった。
そのステップが初めて崩されたのが、安蘭と同期の77期生としてトップになった
朝海ひかるである。朝海は60周年以降、新公主役を経験せずにトップになった初めての例となった。
この期にはもう一人、
春野寿美礼がトップになっており、男役3人の頂点を出した栄光の期でもある。史上最長期間のヒロイン記録を持つ娘役トップ
花總まりも同期生だが、テーマが逸れるのでここでは触れない。