「道灌」とペギー・リー
寄席の業界用語でお客さんが10人以上だと「つばなれ」といったりします。隠語です。ひとつ、ふたつ…と数えて、「つ」がつくのは9つまで。10以上だと「つ」の字がとれるので、「つばなれ」。

また、雨天にかさをもっていないと「きょうはドウカンだ」なんていったりする。これは太田道灌の故事にあやかった「道灌」という落語からきています。
歌人であり戦国武将の太田道灌がひとり狩りの途中にわか雨にあい近くの農家に雨具を借りに入ると、小娘が山吹の小枝を差し出し「七重八重 花は咲けども山吹の 実のひとつだに無きぞ悲しき」と貸すべき簑(みの)と実をシャレに織り込んだ歌。道灌さん、このしゃれがわからずに後日「余は歌道に暗い」と歌の道に励んだという有名な話。
ご隠居さんにこの話を教えてもらった熊さんが、わが長屋に帰ってみると八っさんが提灯を借りにきた。さっそく「七重八重…」の歌を披露してみると相手の八っさんも歌を知らない。「お前も歌道が暗いな」「そうだ。歌道(角)が暗いから提灯を借りにきた」。これが「道灌」のオチ。
でも、今はやっている寄席の用語は、お客の入りが少ないと「きょうはアメリカンだ」なんていったりする。アメリカンコーヒーは薄いからなんてす。
さて、こちらは往年の名歌手、ペギー・リーの名盤「ブラック・コーヒー」。苦みのきいたコーヒーを味わってこそ恋も人生も知って大人になっていく。もう1曲「LOVE ME OR LEAVE ME」。聴くとゾクゾクしてきちゃう。いちどでいいから「私を愛してくれるの? それとも離れていっちゃうの?」なんていわれたい。
ここで私からクイズを。ペギー・リーとチェット・ベイカー(ジャズトランペット奏者で歌手)が結婚してお店をオープンしたとしたら、なんのお店でしょうか? 答え。ベイカーとリーだからベーカリー=パン屋さん。
お粗末様でした。