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クライマーズ・ハイ
苦悶の果ての渾身の作品
横山秀夫 文藝春秋 629円(税別)
1985年8月12日−。群馬の地方新聞記者、悠木和雅は同僚の安西と、登山家ならだれもが恐れる谷川岳の衝立岩に挑戦するはずだった。が、出発間際、編集部に通信社からの音声速報が響き渡る。「運輸省発表。日航123便、レーダーから消える。」

悠木の戦いが始まった。全権デスクに任命された悠木は、記者として世界最大級の航空機事故に立ち合うこととなった興奮を覚えつつも、520人の犠牲者の命の重み、他社との取材攻防、社内の派閥抗争にもまれ、疲弊していく。

著者は、日航ジャンボ機墜落事故の取材経験をもつ元上毛新聞記者。平成3年に退職し、小説家の道に入った。日航機事故を題材にすることに苦悶した。その葛藤をある談話で語っていた。「現場を踏んだという新聞記者の自慢話になる」

それだけに凄惨(せいさん)な事故現場のようすや遺族の悲痛をほとんど描かず、日々、日航の紙面構成に追われる全権デスク、悠木の「紙」との対峙によって人間の生きるさまを読者に突きつける。一方で、果たされなかった安西との約束、悠木の息子、淳とのすれ違いというドラマが並走し、悠木という男の味わいをふくらませる。(R)

これまでに読んだ本
悪女について阿修羅のこどくハリー・ポッター神様からひと言
模倣犯容疑者Xの献身雪屋のロッスさんオペレーション・ローズダスト袋小路の男沖でまつ嫌われ松子の一生イッツ・オンリー・トーク


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