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姿月あさと インタビュー
（５）急な抜擢にひたすら努力
5月25日（金）大阪夕刊
by 飯塚友子
−−結果として、組替えはどんなトピックになりましたか
姿月あさと 大きな大きな転機ですね。月組に行ってから急に「新人公演で主役を」って言われたり、バウホール公演（宝塚大劇場に併設する小ホールで行われる若手スターの登竜門）でも主役になって。もうホント寝て起きたら、人生とか国が変わってたっていう感じ。
−−立場や取り巻く環境もガラリと変わった
姿月 月組に行って、初めてソロで歌をもらって舞台の前に出ていったものだから、親が客席で「うわ、間違えて前に出ちゃった！」って思った（笑）。昔から見てる人もすっごいビックリしてたし。「何が起きちゃったんだ」って。
−−抜擢（ばってき）ですよね
姿月 うーん…（と考え込む）。
−−当時は、いっぱいいっぱい、という感じでしたか
姿月 いっぱいいっぱいを通り越してたかな。努力しかないですね。ずーっとお稽古（けいこ）と引きこもりです。
−−家に引きこもって何やっていたんですか
姿月 掃除（笑）。
−−きれいにすると、落ち着く？
姿月 例えば台本を頂いても、それまで台詞（せりふ）なんか言ったことなかったから、台本や歌を家で覚えなきゃいけなくて集中するとき、いろんなモノが邪魔になってくるんですよ。
−−それを取り除くため、まず掃除するわけですね
姿月 神経がすごい過敏になって、髪の毛１本でも落ちているのが目に入るとダメっていうくらい。
−−台詞や歌を覚えるのに、自分の家が一番、落ち着いて仕込みができた
姿月 そう「仕込み」。いい言葉ですね。焼鳥屋さんが開店前にくしを刺しておくような。仕込みが大事ですね。
−−期待に応えようと一生懸命…
姿月 人のためではなく、自分のためにやったんです。
−−役や歌をどう自分で料理して表現しようかと努力された。そういう積み重ねでステップアップしていったんですね
姿月 上に行きたいとはホント、思ってませんよ。
−−端から見ると、あれよあれよと３番手、２番手からトップになられて
姿月 たまたま自分が３番手、２番手の時のトップさんの変動が早かったので。でも人の下にいて勉強をしたいという意識がすごく強かったから、付いていけなかったです。
−−そのようですね。宝塚の新たな５組目、宙（そら）組の初代トップ就任も打診があってから、ずっと断ってらしたそうで
姿月 みんなが（トップに）なれない中で、お断りするのは「ずうずうしい」とか「よくない」って言われて、なかなか理解してもらえなかったのが辛かった。そういうことだけのために、努力してきたわけじゃなくて、どんな役でも、もらった役の中で努力をしてきて、肩書をメーンにやってきたんじゃないってことなんです。でも今までと同じスタンスでやっても、周りから３番手とか２番手とか、芸名以外の肩書が来るようになって、それに付いていけなかったのかな。
姿月あさと 大きな大きな転機ですね。月組に行ってから急に「新人公演で主役を」って言われたり、バウホール公演（宝塚大劇場に併設する小ホールで行われる若手スターの登竜門）でも主役になって。もうホント寝て起きたら、人生とか国が変わってたっていう感じ。
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| 花組から月組に組替えになり、若手男役として注目されるようになった＝平成５年 |
姿月 月組に行って、初めてソロで歌をもらって舞台の前に出ていったものだから、親が客席で「うわ、間違えて前に出ちゃった！」って思った（笑）。昔から見てる人もすっごいビックリしてたし。「何が起きちゃったんだ」って。
−−抜擢（ばってき）ですよね
姿月 うーん…（と考え込む）。
−−当時は、いっぱいいっぱい、という感じでしたか
姿月 いっぱいいっぱいを通り越してたかな。努力しかないですね。ずーっとお稽古（けいこ）と引きこもりです。
−−家に引きこもって何やっていたんですか
姿月 掃除（笑）。
−−きれいにすると、落ち着く？
姿月 例えば台本を頂いても、それまで台詞（せりふ）なんか言ったことなかったから、台本や歌を家で覚えなきゃいけなくて集中するとき、いろんなモノが邪魔になってくるんですよ。
−−それを取り除くため、まず掃除するわけですね
姿月 神経がすごい過敏になって、髪の毛１本でも落ちているのが目に入るとダメっていうくらい。
−−台詞や歌を覚えるのに、自分の家が一番、落ち着いて仕込みができた
姿月 そう「仕込み」。いい言葉ですね。焼鳥屋さんが開店前にくしを刺しておくような。仕込みが大事ですね。
−−期待に応えようと一生懸命…
姿月 人のためではなく、自分のためにやったんです。
−−役や歌をどう自分で料理して表現しようかと努力された。そういう積み重ねでステップアップしていったんですね
姿月 上に行きたいとはホント、思ってませんよ。
−−端から見ると、あれよあれよと３番手、２番手からトップになられて
姿月 たまたま自分が３番手、２番手の時のトップさんの変動が早かったので。でも人の下にいて勉強をしたいという意識がすごく強かったから、付いていけなかったです。
−−そのようですね。宝塚の新たな５組目、宙（そら）組の初代トップ就任も打診があってから、ずっと断ってらしたそうで
姿月 みんなが（トップに）なれない中で、お断りするのは「ずうずうしい」とか「よくない」って言われて、なかなか理解してもらえなかったのが辛かった。そういうことだけのために、努力してきたわけじゃなくて、どんな役でも、もらった役の中で努力をしてきて、肩書をメーンにやってきたんじゃないってことなんです。でも今までと同じスタンスでやっても、周りから３番手とか２番手とか、芸名以外の肩書が来るようになって、それに付いていけなかったのかな。
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■記事関連情報 しづき・あさと 昭和４５年、大阪市生まれ。市立淀川中学卒業後、宝塚音楽学校に入学。６５年ぶりに誕生した新組「宙組」トップスターとしてミュージカル「エリザベート」などに主演。平成１２年退団後、ヴォーカリストとしてフル・オーケストラと競演するなど幅広く活躍。  |
